なぜ人は行動できないのか
「行動しなければ、何も変わらない」
こうした言葉を、これまで何度も聞いてきたと思います。
やるべきことは分かっている。
必要な情報も調べている。
それでも、なぜか動けない。
この状態が続くと、多くの人は
「自分の意思が弱いのではないか」
「怠けているだけなのではないか」
そう考えるようになります。
ただ、最初に一つ確認しておきたいことがあります。
行動できなかった理由を、性格や根性の問題にする必要はありません。
行動できない人の多くは、何も考えていないわけではありません。
むしろ、考えすぎるほど考えています。
どうすれば失敗しないか。
どうすれば周りに迷惑をかけないか。
どうすれば「ちゃんと」できるか。
その結果、準備は増えていくのに、行動だけが起きない。
この矛盾した状態に、長く苦しんできた人も多いはずです。
もし本当に怠けているだけなら、
ここまで悩むことはありません。
ここで前提を一つ置きます。
行動は、意思の力だけで起こるものではありません。
人の行動は、脳や神経系が
「今、動いても安全かどうか」を判断した結果として起きます。
この判断の多くは、意識に上がる前に行われます。
つまり、本人が「やろう」と考えるより前に、
すでに「止まる」「避ける」という選択が終わっている場合があります。
行動できない人の背景には、共通した経験が見られることがあります。
- 動いた結果、強く否定された
- 頑張ったのに、報われなかった
- 正しくやろうとして、傷ついた
こうした経験が重なると、
脳は「行動=リスクが高いもの」と学習します。
その結果、行動しようとした瞬間に
不安、重さ、抵抗感といった反応が出ます。
これは意志の弱さではありません。
過去の経験から作られた、自然な反応です。
それにもかかわらず、私たちは
「考える前に行動しよう」
「とにかく続けることが大事だ」
といった言葉を繰り返し受け取ってきました。
この言葉自体が間違っているわけではありません。
ただ、すでに「行動=危険」と学習している状態の人にとっては、
逆に状況を悪化させることがあります。
行動できない理由が理解されないまま、
「できない自分」に原因があると思い込んでしまうからです。
ここで整理します。
行動できなかったのは、怠けや甘えではありません。
行動を「意思と努力の問題」だと考えてきた前提が、
その人の状態に合っていなかっただけです。
このズレが続くと、
行動しようとするたびに自分を責めるようになります。
そして、ますます動けなくなっていきます。
このシリーズでは、「どうすれば行動できるか」をいきなり扱いません。
まずは、
- なぜ行動が止まるのか
- どこで無理が起きているのか
- どんな前提が合っていなかったのか
その構造を、順番に整理していきます。
次回は、
「なぜ『行動しろ』という正論が、人を追い詰めてしまうのか」
その理由を、脳の働きという視点から見ていきます。
