行動できない理由の構造【2】
行動しようとすると苦しくなる理由
「やらなければいけない」と思った瞬間、
なぜか胸が重くなる。
呼吸が浅くなる。
理由は分からないけれど、体が嫌がっている感じがする。
行動できない人の多くが、
この感覚を経験しています。
そしてほとんどの場合、
この反応に対してこう考えます。
「気のせいだろう」
「甘えているだけかもしれない」
「乗り越えなければならない」
ですが、この苦しさには
はっきりとした理由があります。
まず前提として、
脳は「正しさ」ではなく「安全」を優先します。
やるべきかどうか。
正解かどうか。
合理的かどうか。
それよりも先に、
「これは自分にとって安全か」
という判断が行われます。
この判断に引っかかると、
行動しようとした瞬間に、
体がブレーキをかけます。
では、なぜ「行動」が
苦しさと結びついてしまうのでしょうか。
多くの場合、背景にあるのは
過去の経験との結びつきです。
- 行動した結果、強く否定された
- 頑張ったのに、失敗だけが残った
- 正しくやろうとして、責められた
こうした経験があると、
脳は「行動=嫌な結果が起きるもの」と学習します。
すると、
行動しようとするだけで、
当時の緊張や不安が再現されます。
本人にとっては、
理由の分からない苦しさとして現れます。
この反応は、
記憶を思い出しているというよりも、
条件反射に近いものです。
考える前に、
体が先に反応してしまう。
そのため、
「今はもう安全だ」
「今回は違う」
と頭で理解していても、
苦しさは消えません。
ここで多くの人が、
さらに自分を追い込みます。
「逃げてはいけない」
「ここで引いたらダメだ」
「気合で何とかするしかない」
こうして無理に動こうとすると、
一時的に行動できたとしても、
強い疲労や反動が残ります。
そして次に行動しようとしたとき、
さらに強い苦しさが出ます。
これが、
「前よりも動けなくなる」
という状態を作ります。
重要なのは、
この苦しさは、壊れているサインではないという点です。
むしろ、
過去の経験をもとに
危険を避けようとしている反応です。
問題は、
その反応が今の状況に合っていないことです。
行動しようとすると苦しくなる人ほど、
これまで何度も無理をしてきています。
本当はしんどかったのに、
「やるべきだから」と動いてきた。
怖かったのに、
「逃げるわけにはいかない」と踏ん張ってきた。
その積み重ねが、
行動そのものを
負荷の高いものにしてしまいます。
ここで方向を間違えると、
「もっと慣れれば楽になる」
「繰り返せば平気になる」
と考えてしまいます。
ですが、
苦しさの原因を無視したまま
行動だけを重ねると、
反応は弱まるどころか、
むしろ強化されることがあります。
ここまでの話をまとめます。
- 行動しようとすると苦しくなるのは
意思の問題ではない - 過去の経験と行動が結びついた結果、
体が自動的に反応している - 無理に乗り越えようとすると、
状態が悪化することがある
このシリーズでは、
この苦しさを無視して進むことはしません。
まず、
どこで結びついたのか。
何に対して反応しているのか。
どの程度の負荷で反応が出るのか。
そこを丁寧に見ていきます。
次回は、「努力や継続が、なぜ行動を壊してしまうことがあるのか」
その構造を扱います。
多くの人が信じてきた
「正しい努力」が、
なぜ逆効果になるのか。
ここまで読んできた方には、
自然につながる話になるはずです。
行動変容スペシャリスト 河野牧人
